巨大な水

通り過ぎるものすべて

『スワロウテイル』(1996)について

短文の羅列です。ネタバレを含みます。




 

 

 

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凄いシーンだな……ってところがいくつかあってそれが脳に焼き付いているが、ストーリー全体として好みって感じではなく、やっぱり少しでも話に整合性が無いとか感情の論理の説明が足りないとか思っちゃうと最高評価にはならないんだな

 

全部無秩序でだけど笑い合って生きることができる調和が彼らの中にだけはあって、その生き方は彼らにとって正しすぎるものだった

 

ドリセキと言ってニヤリと笑うリン、かつて夢をかなえた場所で札束の中に倒れ込むフェイホン、死の直前にアゲハ蝶が確かに空に飛んで行ったことを思い返すフェイホン、あたりが本当に刻み込まれた 最初グリコはどんな悲惨な死に方するんだろうと思ってたけど、女じゃなくて男が死んだのは構造的に面白かった

 

こんなにずっと少年の顔つきを、目を保ったままのフェイホン、そりゃこんな世界じゃ生きていけないし何時かこうやって制度や社会に殺されることにはなってしまったんだろう、それでもこんな風に死ぬこと、あったかなぁと思わされる 天国に行けるくらい魂が純粋で幼児みたいな素直さを持っていたのに大人になってしまったから、ああなるしかなかったのかな 警察がフェイホンを拷問するシーンはこれを作った人間の制度に対するめちゃくちゃな怒りを感じられて大変良かった

 

ランドセルに貯められる偽札とか、子供同士で立派な社会の上下関係を築いてる姿とか 確かにこれは夢中になる人がいるのもわかる カタルシスがある

 

やっぱあんなに輝いてたフェイホンの目が血まみれのベッドの上で濁ってるシーン、すさまじかった じわじわと、なんでこんな風に死なないといけなかったんだろうねって悲しみがこみあげてくる