巨大な水

通り過ぎるものすべて

『親切なクムジャさん』(2005)について

ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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良すぎて本当にもう…………最初から最後まで喜びのあまり笑い続けてたし、テンポも見せられるものも物語の内容も全部自分好みだった。クムジャさんの顔が実際に光っていたり、ペク先生と犬が合体してたりするCGの唐突過ぎる使い方も、妙に戯画化された伝道師もコメディなのに不気味で、JSAの時のユーモアは追い詰められた人間の悲哀と共に出てくるものだったけどこっちは狂気に満たされた人間の脳内に生じる可笑しい妄想という感じで、はぁ~~上手いですね……。

 

拳銃の飾りを見た時の、「どんなものでも綺麗じゃなきゃだめ」一番良い台詞だった。異国で娘の引き取り手と無邪気に戯れる笑顔と同居する、真っ赤なアイシャドウを塗った気だるげな女、最後までどの瞬間も綺麗であればあるほど彼女が背負わざるをえなかった最悪なものどもが引き立って、それを引き立ってると思う自分達もグロテスクなんだな~。

 

ソン・ガンホとシン・ハギュンがさらっと出てきた時は嬉しいとかとは別に普通に面白くて笑ってしまった。JSAと復讐者に憐みを、の別の世界線ってやつですね、見せてくれてありがとう、結末はほぼ変わらないけど。

 

ペク先生が気絶させられてる横にジェニーが眠っているのとか、横並びになった被害者遺族たちとか、進化したカット、さらに洗練されてこれがお嬢さんとか別れる決心になっていくんだ、を時代をさかのぼって知れたのは面白かった。このストーリーに芸術性の高いカットをぶち込んでこれる感覚、凄い。と言うか本当にずっと褒めてるけどマジで良かったんですよね……。

 

一番感動したというかこの映画満点だわ、となったのは復讐の果たし方で、全然彼女が殺して終わって罪を償うのかなと適当に考えてたら遺族を引き連れてきてそっからまだドラマが始まるっていう、凄くないかこれ?だからファムファタールになる女が人殺しをするのを描く映画じゃなくて、児童誘拐事件に対する怒りがちゃんと満ちてるってのが分かった瞬間がほんとすごかったな……もうこれ以上のものはないかもしれないとか思った。

 

返り血だけじゃない血で赤く染まったクムジャさんはもう白く生きることはできないけど、それでもケーキになんども顔を突っ込むんですよね、魂は漂白されないけど彼女はこれからも多分生きていくんだろうな、が見えるラスト、最高だった。これ以上見ていないパク・チャヌク作品が減るのが惜しい~ずっと見てたい~~て初めて映画に対して抱く感想でした。