巨大な水

通り過ぎるものすべて

『別れる決心』(2022)について

パク・チャヌク作品は『お嬢さん』でドハマりしたのに他の作品を一切見れておらず、とりあえずアマプラにいるやつから始めよ……で見た。ネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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〇画面
文句なしすぎる~~本当にカットの作り方、天才だ!!と大喜びでみていた。モチーフの繰り返しや山と海がどんな意味を持ってるとかはあんま気にしてないが、死体の目から見つめられるヘジュン、不倫相手の家に行くために増す車のスピード表示とそれにに重ねられた、ハンドルを握る左手薬指の指輪、ビルも森も濃い緑の中に流れる赤い血、全部完璧……。こういう視覚への特別さみたいなので落ちたので今回も大満足だった。雪の中でヘジュンの濡れた睫毛が瞑った目にかかるシーンとか、もう、一生忘れられないだろてくらいのインパクトがあるのに、徹底的に静かだったりとか。


〇官能性
太ももにある引っ掻き傷を男の刑事にそのまま撮らせる感じとか、ハンドクリーム塗りこませるとことか、きわどさをそのままお出ししてエロいとか興奮とかじゃなくて「いやらしい」という雰囲気を直接見せられるのも技術ですよね~、普段よりも暴力やら性描写は控えめって前評判だったけどそりゃ控え目だろうとパク・チャヌクパク・チャヌクだった……。

あと別に肌が見えてなくても、花様年華的な秘密の共有の色気みたいなのが多かったか?手錠で繋がれて車の後部座席に座るとか、家族の遺灰を相手に撒かせるとか、というか家族の遺灰撒かせるシーン本当に、ロマンチック仕草の正解すぎて驚いた、唯一無二の相手だということの証明すぎる。


〇そうすることしかできなかった人たち
自分が大人ではないということなのかもしれないが、普通にヘジュンとソレの関係が接近していく過程は純愛とか悲しいとかじゃなくて「最低では??」という感想だったな~あまりにも静かにいやらしかったのもあるし、ヘジュンが結局煮え切らない(=落ち切って自分から離婚しようとかしない)とこへの嫌悪感でもあったか?でもその「最低だな」という気持ちすら、画面の美しさやサスペンス部分のネタのスマートさと対比して映画の価値になってる感じがもう……はい……凄いな本当に~でした。

未解決事件の死体やらの写真を見て、その説明を聞きながらご飯を食べられるソレ、血と暴力がないと生きれない刑事のヘジュン、お互いしか居なかったんだろうな、と、でもどうしようもないですよね、の哀しさを演出するのが上手~もう上手としか言えないけど。

ソレがヘジュンの声を録音したのも、まあ結果的にはI LOVE YOUをいつでも聞けるようにはなったけどそもそもは、こんなに信用したいと思っている相手だろうと弱みをさらけ出してる瞬間は録音しないといけないみたいな、そうすることでしか生きていけないみたいなものの発露に見えたな。

ヘジュンが、自分のせいで人が死んだのか?と問い詰めるシーンも良かったですね、ソレが自分に執着してると本心から分かってないとあんなこと聞かないのに自分が相手に言った「愛してる」は否定する愚かでずる過ぎる男~。そこから砂浜を踏みつけて誰にも見つからない深いところに埋まったソレを探す姿の滑稽さと悲哀とか。

全体的に、違う選択肢が取れたのかもしれないしそっちが「正しい」んだろうけど、自分の魂に従うならこうするしかなかった、なソレとそこまで落ち切ることができない、誇り高くなんてないヘジュン、になったかな一回目の印象は。二回目をみたらまた変わるらしいと言う意見を割と見かけたけど。

 


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あと意外とコメディっぽい部分が多くて、基本それをヘジュンの部下(後輩?)刑事が担当してたのは面白かった、二重の意味で。タバコを一気に日本咥えてるとことか普通に笑ったし、ヘジュンを照らし出すためでもあったんだろうし、若さとユーモアを薄っすら結び付けてたのか?二回くらい見ないとここらへんの答え合わせはできなさそう。

見た後放心状態になってて、散々見てる間はこいつら最低では?とか画面綺麗だな~とか考えてたのに最後まで見きった後はただ大きな波にのまれたみたいになんも考えられなくなったの、映画として大成功の体験すぎる。


言葉では決して再現できない、目を奪って心を一瞬で掴んでくるような画面の作り方がやはりめちゃくちゃ上手かったな~と思う、メディアの特別さが際立つ作りをしてる作品好きなんだよな本当。